産学連携でサツマイモ基腐病から日本のサツマイモを守るプロジェクト

※掲載内容は取材当時のものです。

プロジェクト概要

サツマイモの産地である鹿児島・宮崎を中心に、サツマイモ基腐病(もとぐされびょう)という病気がまん延しており、焼酎メーカーなどサツマイモに関わる産業に大きな打撃を与えています。 このプロジェクトは、さまざまな角度からサツマイモ基腐病に対する現状を発信することで、サツマイモ基腐病からサツマイモを守り、ひいてはサツマイモ産業を守る一助になることを期待して立ち上げました。サツマイモ基腐病に対する情報を共有し、サツマイモに関わるすべての人がつながることで、サツマイモ産業の発展にも寄与したいと考えております。 プロジェクト名:みんなのサツマイモを守るプロジェクト-Save The Sweet Potato-         https://www.savethesweetpotato.com/ コンソーシアム参加企業(設立時):welzo、CULTA、九州大学、薩摩酒造、小鹿農業生産組合

Q1 サツマイモ基腐病(もとぐされびょう)とは?

2018年に日本ではじめて発症が確認された「サツマイモ基腐病」(以下、基腐病)。糸状菌(カビの一種)が原因で、感染すると葉や茎が枯れ、サツマイモが腐敗する病気です。鹿児島・沖縄で感染が確認されて以降、全国各地に拡大しています。中でもサツマイモ産地である鹿児島・宮崎では、基腐病がまん延しており、サツマイモに関わる産業に大きな打撃を与えています。 鹿児島県のサツマイモ収穫量は、日本全体の約35%を占め、国内トップシェアを誇ります。鹿児島県を代表する特産品である芋焼酎は、サツマイモを原料としており全国的にも有名です。実際、県内で栽培されるサツマイモのおよそ5割は焼酎原料として使われています。 鹿児島県では、感染確認以降、毎年サツマイモの収穫量が減少しています。サツマイモ生産者へ取材すると、被害状況には共通する部分が見られます。1つ目は殺菌剤が効かないこと。基腐病では有効な特効薬がいまだ開発されておらず、一度発症すると被害が一気に拡大してしまいます。基腐病に感染後、「コガネセンガン」や「べにはるか」といった品種の生産者では、例年の半分以下にまで収穫量が減少しました。2つ目は感染力が強いこと。ある畑で発症すると、次第に周囲の畑も汚染されていき、被害が抑えられないのが現状です。3つ目は有効な手立てが見つかっていないこと。生産者が、さまざまな対策に取り組んでいますが、いずれも目立った効果が得られておらず、抜本的な解決に至っていません。 多くの生産者は、収穫量とともに収入が減少しながらも、基腐病への対応に追われており、コストや労力がかかる状態が数年にわたって続いています。負のスパイラルが続く状態で、サツマイモの生産を辞める農家の方々も増加しています。

Q2 プロジェクト立ち上げの背景は?

プロジェクトリーダーのコメント

「今回のプロジェクトを立ち上げた背景は、サツマイモ経済圏で生きている方々へ貢献していきたいという想いです。昨今、基腐病の問題が深刻化し、サツマイモ農家だけでなく、サツマイモに関わるすべての産業に大きなダメージを与えています。基腐病の被害が最もひどかった鹿児島県では、焼酎用のサツマイモ生産量約15万トン、焼酎メーカーの売上高にして約650億円のうち、約47%が失われ、焼酎メーカーの生産量ベースでは約3,500万本、売上高ベース換算で約300億円もの市場が失われました。そして南九州一体は、サツマイモ経済圏があり農家、加工業、アルコールなど多岐に渡ります。その根幹となるサツマイモが取れなくなると全ての市場が喪失してしまうのです。 そしてこのプロジェクトは、あえてコンソーシアム型という形を取らせていただきました。弊社は、あくまでもこのプロジェクトの裏方で良いと思っています。この国民食であるサツマイモを守りたいという皆様に是非参画してもらい、一刻でも早くこの状況を打破できるように出来ることは何でも貢献していきたいと思っています。」 (後藤 基文 / 株式会社welzo Biz Promotion Division 取締役)

Q3 本プロジェクトの目的は?

本プロジェクトは、薩摩酒造株式会社(鹿児島県枕崎市)、小鹿農業生産組合(鹿児島県鹿屋市)、九州大学大学院農学研究室/土壌環境微生物学研究室、東京大学発アグリテックベンチャーのCULTA(東京都渋谷区)のほか、鹿児島県の農家の方々にご賛同いただき活動をスタートしました。参加企業・個人それぞれの、基腐病への防除法や現場での生の状況を、プロジェクトのホームページにて紹介し、広く情報の共有を図ってまいります。 ①農家、焼酎メーカー、大学など分野を横断した知見の集約により、基腐病の知恵袋に 基腐病に対する情報を共有し、サツマイモに関わるすべての人がつながることで、本コンソーシアムが基腐病の知恵袋となります。さまざまな角度から情報を集約・発信することで、基腐病からサツマイモを守り、SDGs(Sustainable Development Goals)でもある持続可能な農業の推進により、食料安全保障を実現することを目指します。 ②いまだ解明されていない基腐病に対する「防除法」を研究・発信 全国のサツマイモ産地でまん延する基腐病に対して、いまだ効果的な防除法は解明されていません。本コンソーシアムでは、農家、焼酎メーカー、大学などが連携し、防除法を研究・発信してまいります。 ③九州大学、スタートアップ含めた連携により、防除法や基腐病に強い品種の開発も視野に 九州大学や東京大学発アグリテックベンチャーのCULTAを含めた連携により、防除法の研究だけでなく、基腐病に強い新たなサツマイモの品種の開発なども視野に入れて、知見の集約や研究を進めます。

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